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通信用電線

架空送電線 地中電力ケーブル 絶縁電線・ケーブル

絶縁電線・ケーブルの技術動向

絶縁電線・ケーブルは弱電から特別高圧まで多種多様なものが産業プラント、電力配電線路からビルや一般家庭の中まで幅広い分野で使用されている。この分野の特徴は、使用場所、使用環境、要求特性などの多様性にある。そのため、従来から各種用途にそれぞれの使用条件に適合した構造・特性を持つものが検討・開発され使用されてきたが、それぞれの用途に最適な性能、経済性を持った電線の要求はさらに強まってきている。

具体例としては、近年の防災意識の向上により高度の難燃化、さらにより安全性の高いノンハロゲン化が図られたケーブルの使用が各方面で促進されている。

また、ケーブル布設時の省力・省スペース化の要求に対応して、ビル内幹線及び情報配線のプレハブケーブル化やオフィス内のOA機器の増大、レイアウト変更に容易に対応できるフリーアクセス配線システムなども普及してきており、地中配電線路関係では都市美観の改善のために従来方式と比べ簡便に地中化できるC.C.Box(簡易型共同溝)などの導入が図られてきている。

また近年目覚ましい発展を遂げている光伝送技術を採り入れて、移動機械、水底ケーブル及び他の分野に見られるように、ノイズレス化、多機能化、軽量化を図った光ファイバー複合ケーブルの適用範囲が広がってきている。

他にも、例えば、車両関係で特に強い細径化、軽量化の要求に対して、従来の汎用材料に代わって被覆の薄肉化が可能なフッ素樹脂系材料が適用されたり、原子力関連施設の放射線の強い領域にはポリイミドやPEEKなどの新材料の適用が検討されている。

一方、規格・基準の面では、IEC規格を取り入れた電気用品の技術省令第2項が全面改正され、またJISにおいてもIEC規格を翻訳したJISが制定された。

配電用電線・ケーブル

絶縁材料はビニル、ポリエチレンなどが主で架空送電線から高圧ケーブル等に至るまで幅広く使用されている。

これらのケーブルにおいては、種々の劣化現象が見られたこともあったが、その対策も十分施され、性能向上を図ってきている。

例えば、架空絶縁電線の応力腐食割れ現象に対しては、腐食対策としての防錆、水密化の手法として、導体の圧縮、コンパウンドの充填等による対策を施してある製品が使用されている。

また、高圧ケーブルでの浸水課電劣化(水トリー劣化)に対し、半導電層と絶縁体の同時押し出化、遮蔽層付きケーブルなどが普及している。

さらに、保守診断技術も向上し、その簡易化、高精度化を図り、高圧ケーブルの水トリー劣化に対し活線診断手法が採り入れられ、効果をあげている。また電力安定供給の要求に対して、無停電工事法や活線工事機械などが開発・実用化されている。

設備用電力回路、制御・計装回路用ケーブル

設備用電力回路ケーブルは、CVケーブル、VVケーブル、SHVVケーブルが主流であるが、防災意識の向上により、ケーブルの高難燃化、低発煙化、ノンハロゲン化が拡大してきている。これらの改良とともに防蟻・防鼠性能を兼備させる要望もあり、製品の高機能化が進んでいる。

施工における省力化、工期短縮の利点からビル内幹線、トンネル照明、集合住宅の屋内配線が現場方式に代わり、電線メーカーの工場内で分岐加工を施すプレハブケーブルの採用が一般化してきており、なかでも個別住宅の分岐配線をユニット化した「屋内配線用ユニットケーブル」は日本電線工業会において自主認定が行われている。

制御・計装回路用ケーブルでは、光ファイバーケーブルの採用が定着してきており、個別回線においては電子機器の誘導障害対策として遮蔽付きや対よりが増える傾向にある。

ビル用配線ケーブル

オフィスビルのインテリジェント化が進み、コンピュータ等のOA機器に適したケーブル及び配線方法が開発・運用されている。コンピュータ電源用としては400Hzの高周波使用時(スイッチング電源用)の電圧降下対策を施した多心型や同軸型の低インピーダンスケーブル、さらに従来多く採用されていた幹線用バスダクトに代わる経済性、施工性、保守性、防水性等に優れた大サイズ平形低インピーダンスケーブル及び分岐高圧CVケーブルが使われている。

また、オフィス内のOA機器・電話配線用として美観やレイアウト設計の容易さの面などから、アンダーカーペット配線システムやフリーアクセスフロア配線システムが主流となっている。

一方、デパート、ホテル等の建築物における各種防災設備への配線は、露出配線可能な耐火・耐熱ケーブルが使用されているが、ビルのインテリジェント化や大型化が進むと従来以上の安全性確保が必要となるため、高難燃ノンハロゲン耐火・耐熱ケーブルが認定され、使用されるようになっている。

移動機械用ケーブル

移動機械の代表的なものとして、石炭や鉱石のストックヤードで使用されている移動機械があげられる。

大型移動機械に用いられる移動用ケーブルは、(1)走行用ケーブル(2)塔内ケーブルの2種類からなっており、(1)は主に平形キャブタイヤケーブル、(2)は丸形キャブタイヤケーブルが用いられている。従来これらのケーブルは、電力送電用の動力ケーブルと制御・信号伝送用の制御ケーブルとに分け、布設場所も機械の両側に分けるなど、誘導を避けるべく工夫がされたきたが、この制御回路に光伝送を利用することにより誘導問題を解決し、さらに光ファイバの広帯域を利用して光伝送に用いるファイバを動力ケーブルに複合させ、制御ケーブルを省略した構造が主流となっている。移動機械もますます自動化が進んでおり、動力ケーブルは大容量化し、制御ケーブルは多線心化しているが、動力ケーブルに光ファイバを複合しておけば、その広帯域性、無誘導性、絶縁性から端末機器の一部変更のみでケーブルを引き替えることなく各自動化段階に合わせた高性能な伝送回路が得られる。

船用電線ケーブル

船用電線は、IEC60092-3に準拠したJIS C 3410「船用電線」に規定された電線及びこれにIEEE45に規定された難燃性を付与した「耐延焼性船用電線」(JIC第390号)が一般に使用されている。しかし、IEC60092-300番台の規格の整備が進み、また、IEC規格とJIS規格の整合性を図るため、電線サイズも含めた大幅な改正が平成11年3月に行われた。また、防衛庁の艦船の分野では、ノンハロゲン高難燃を特徴とする船用電線としてNDS F8764G「艦船用電線」、NDS F8764D「艦船用水密電線」が防衛庁規格として制定されており、これらが採用されている。

原子力発電所用ケーブル

耐放射線性および安全性向上対策としての高難燃性、低ハロゲン性が要求されるが、特に厳しいLOCA(冷却剤喪失事故)模擬試験の要求または高度な耐放射線性の要求に対しては、EPゴム、ケイ素ゴム、クロルスルホン化ポリエチレンなどのゴムを使用したケーブルが使用されている。原子力発電所用ケーブルに要求される耐放射線性は通常高いもので2MGy程度であるが、最近では核燃料サイクル施設などで10MGy程度耐放射線性を要求されることもあり、ポリイミド、PEEKや特殊EPゴムなどを使用したケーブルも開発され、一部実用化されている。

車両用・口出電線

鉄道車両においては、電気回路の増加に伴う配線スペース不足対策と車体の軽量化を目的として、フッ素樹脂などを用いた薄肉軽量化電線が使用され始めた。

地下鉄車両では、火災時の延焼防止や有害ガスの発生が少ないことから、ノンハロゲン高難燃電線の適用が拡大している。

口出線分野では、EPゴム等の汎用ゴム絶縁電線の代わりに、耐熱性およびコスト面で有利な、難燃架橋ポリエチレン絶縁電線の需要が増加している。

その他ゴム系電線

ゴム軽電線はEPゴム、クロロプレンゴム、ケイ素ゴムなどを絶縁体に使用しており、周囲の環境により、使い分けられている。

配電用の電柱周囲の縁回し用、引き下げ用やキュービクル内には、可とう性に富み、耐候性、耐トラッキング性に優れたEPゴム絶縁電線が使用されている。

溶鉱炉周辺等の高温環境には、耐熱性に優れたケイ素ゴム絶縁電線などが使用されている。

また、海洋開発機器用で端末をモールド加工する電線には、モールド加工性の良いクロロプレンゴム、ポリウレタンゴムなどを絶縁体に使用する場合が多い

規格・基準改正の国際整合化

電線・ケーブルの国際整合化JIS 25件が新しく制定された。これらは電線工業会が国から「電線分野の国際整合化の調査研究」を受託し、既存のJISに対応するIEC規格(IEC227シリーズ及びIEC245シリーズと関連の導体および試験関係規格)を翻訳して提出したものである。今後、7年以内の経過措置期間の間、従来のJISと今回制定された国際整合化JISが2本立てで運用されることになる。

また電気用品の技術基準も国際規格への一層の整合化を図るため、「電気用品の技術上の基準を定める省令第2項に基づく通商産業大臣が保安上支障のないと認める基準」の全面改正が行われた。

IEC227シリーズとIEC245シリーズに日本固有の事情によるデビエーションが追加されている。なお、現在の基準により製造輸入されている電気用品には、「3年間は従前の例によることができる」と経過措置期間が設けられた。